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住宅ローンの繰り上げ返済は損なのか?損をしないための正しいタイミング

更新日:2021.08.30

住宅ローンの返済額を抑える方法として、「繰り上げ返済」は有効な手段の一つです。繰り上げ返済をすると、返済期間を短くしたり月々の支払額を抑えたりといった効果が期待できます。ただし、返済額やタイミングなどを誤ると、想定した効果が得られないことがありますし、場合によっては負担が重くなる可能性もあります。

今回は繰り上げ返済を上手に活用するために知っておきたいポイントを、返済シミュレーションを交えながらお伝えします。

繰り上げ返済とは?

住宅ローンの繰り上げ返済とは、まとまった自己資金ができたときに自由なタイミングで返済ができる仕組みのことです。毎月の返済とは別に、ボーナスで貯めた資金や保険の解約払戻金などを都合のよいときに返済でき、融資の元本を減らせます。

元本が減れば、将来支払う予定だった金利負担も抑えられます。つまり、トータルの支払額を削減でき、返済期間の短縮や月々の支払額の低減につながることが、繰り上げ返済を利用する大きなメリットです。

繰り上げ返済の種類

繰り上げ返済には、大きく二つのタイプに分かれます。一つが、支払期間を短くする「返済期間短縮型」、もう一つが毎月の返済額を下げる「返済額軽減型」です。それぞれの特徴を理解した上で、どちらを選択するのが得策かを決めることも重要なポイントです。

返済期間短縮型

返済期間短縮型とは、繰り上げ返済で少なくなった残債の分だけ、返済期間を短くできる方法です。

期間は短縮できますが、毎月の支払額は変わりません。このため、繰り上げ返済の効果を感じにくい方法といえますが、早く完済したい方や定年後もローンの支払いが続く方などにとっては返済期間短縮型が適しています。

また、利息の軽減効果は返済期間短縮型のほうが大きいといわれます。金利負担がもったいないから少しでも抑えたい、という方も返済額軽減型を選ぶことが多いようです。

●返済期間短縮型が向いている人
・定年後もローンの返済が続く予定の人
・早く完済して老後の生活資金を蓄えたい人
・金利負担を少しでも抑えたい人

返済額軽減型

返済額軽減型とは、繰り上げ返済で少なくなった残債の分だけ、毎月の支払額を抑えられる方法です。

繰り上げ返済をした翌月から毎月の支払額を減らせるため、効果を感じやすいことが魅力の一つ。育児や転職などによる家計の負担を抑えたい場合に利用されるケースが多いようです。なお、返済期間は変わりません。

変動金利の住宅ローンを利用している方なら、金利の上昇により支払額が増えるリスクがあります。そのリスクを抑えるために、今から支払額を下げておきたいという方も、返済額軽減型を選ぶ傾向があるようです。

●返済額軽減型が向いている人
・子どもの教育費が増えるため、今から家計を見直したい人
・産休・転職などで収入が一時的に不安定になることがわかっている人
・金利上昇リスクによる影響を少しでも抑えたい人

返済期間短縮型と返済額軽減型のシミュレーション

先ほども述べたように、利息の軽減効果でみると返済期間短縮型の方が大きいといわれます。実際のところ、どれくらいの差が出るのかをシミュレーションしてみましょう。

ここでは、「3,000万円を借り入れた方が、ローン実行から5年目に200万円を返済する」ケースで、返済期間短縮型と返済額軽減型それぞれの軽減効果を比べました。詳細の借入条件は、以下の通りです。

●借入条件
・借入金額:3,000万円
・返済期間:35年
・金利:1.3%(全期間固定金利)
・ボーナス払い:なし
・毎月のローン返済額:8万8,944円

繰り上げ返済前のローン返済額は毎月8万8,944円、残りの返済期間は30年です。これが、繰り上げ返済によってどれくらい変わるかを計算した結果がこちらです。

返済期間短縮型 返済額軽減型
返済期間 27年4ヵ月
(2年8ヵ月の短縮)
30年
月々の返済額 8万8,944円 8万2,217円
(6,727円の軽減)
利息軽減額 89万9,930円 41万5,163円

※参考:金融広報中央委員会「繰り上げ返済シミュレーション」にて算出
https://www.shiruporuto.jp/public/aboutus/container/sikin/menu/s_kuriage.html

返済期間短縮型の場合は、完済時期が2年8カ月も早くなります。また、利息軽減額は90万円近くも抑えられるという結果になりました。これに対して返済額軽減型の場合、毎月のローン支払額を約6,700円も抑えられます。利息軽減額は約41万円です。

返済期間短縮型の利息軽減額が大きいのは、支払期間を短くできるからです。支払期間が長くなれば金利負担も増えますから、返済期間の変わらない返済額軽減型よりもトータルの支払額を抑えられるのです。

とはいえ、家計の状況は人それぞれ異なりますから、その時々の状況に適した返済方法を選ぶことが重要です。判断が難しいときは、金融機関の窓口で相談してみると良いでしょう。

繰り上げ返済はどのタイミングが効果的?

繰り上げ返済を実施する際には、「いつ支払うか」というタイミングがとても重要です。なぜなら、利息軽減額は繰り上げ返済をした時期によっても異なり、軽減効果にも差が出るためです。

たとえば、繰り上げ返済をローン実行から5年後にした場合と、10年後にした場合とでは、利息軽減額が異なります。具体的にどれくらいの違いが出るかを、先ほどの借入条件をもとにシミュレーションして比べてみましょう。

●借入条件
・借入金額:3,000万円
・返済期間:35年
・金利:1.3%(全期間固定金利)
・ボーナス払い:なし
・繰り上げ返済額:200万円

ローン実行から5年目 ローン実行から10年目
返済期間短縮型 89万9,930円 72万501円
返済額軽減型 41万5,163円 34万2,464円

※参考:金融広報中央委員会「繰り上げ返済シミュレーション」にて算出
https://www.shiruporuto.jp/public/aboutus/container/sikin/menu/s_kuriage.html

いずれの場合も、ローン実行から5年の方が10年よりも利息軽減額が大きいことがわかります。元本を早く減らせば利息も減らせるので、できるだけ早く実行した方が利息軽減額は大きくなるのです。

ちなみに返済期間短縮型の場合、残りの返済期間はローン実行から5年だと2年8ヵ月短縮するのに対し、10年だと2年6ヵ月です。また、返済額軽減型は5年だと6,727円の軽減に対し、10年だと7,834円の軽減になります。返済額軽減型は繰り上げ返済の実行が遅いほど軽減効果が大きくなりますが、トータルの返済額で見ると7万円以上多く支払っていることになる点にご注意ください。

繰り上げ返済と住宅ローン控除との関係

繰り上げ返済は早いタイミングで実行すると利息の軽減効果が大きくなりますが、逆に早く実行すると効果が小さくなるものもあります。それが、住宅ローン控除です。

住宅ローン控除の仕組みは、各年末のローン残高の1%を所得税や住民税から控除できるというものです。残高が多いほど控除額も大きくなるため節税効果を得やすくなりますが、繰り上げ返済をすると残高が少なくなり節税効果が小さくなってしまいます。

このため、「繰り上げ返済は住宅ローン控除が終わってから実行した方が得策だ」という考え方も出てくるでしょう。ただ、これも一概にはいえません。

一般的には、金利が高い時期やローン残高が多い人であれば、早目に繰り上げ返済をした方が得になるといわれます。しかし、現在のような低金利が続いている場合や、住宅ローン控除の期間が10年から13年に延長されているような状況だと、住宅ローン控除が終わってから実行した方が得になることもあるでしょう。

住宅ローン控除は、ローン残高や納税額などによって効果は一人ひとり異なります。繰り上げ返済と比べてどちらが得になるかも、一人ひとり異なりますから、気になる方は金融機関などに相談してシミュレーションをしてもらうと良いでしょう。

繰り上げ返済をする際の注意点

繰り上げ返済には、さまざまなメリットがある一方で、利用する金融機関や実行の方法によっては不利益を被る場合があります。繰り上げ返済を行う予定がある方は、下記の点を金融機関に確認した上で実行を検討しましょう。

繰り上げ返済の手数料を確認する

多くの金融機関では、繰り上げ返済の手数料は無料です。しかし、地方銀行など一部の金融機関では1回あたり数万円の手数料がかかるところもあります。

「こまめに繰り上げ返済をしていたら、利息軽減額よりも手数料の方が多くなった」というリスクもありますから、検討している金融機関の手数料もチェックしておきたいところです。

1回あたりの返済額を確認する

こまめに返済したい方は、一度に返済できる金額も確認したいところです。一般的な銀行の場合、1回あたりの繰り上げ返済額に下限を設けていないところがほとんどですが、ネット銀行の場合は最低10万円からといった最低条件額を設定しているところがあります。

なお、住宅金融支援機構が提供するフラット35の場合、繰り上げ返済額は100万円以上からです。返済したくても最低条件額に満たなければ実行できない金融機関や商品もありますので、1回あたりの返済額も確認しておきましょう。

団体信用生命保険の満期が早まる

住宅ローンを契約する際には、団体信用生命保険(団信)への加入が必須です。この保険の満期は、ローンを完済したときになります。繰り上げ返済をすれば、団信の満期も早まりますから、保証期間が短くなる点にも注意が必要です。

他に契約している生命保険などがあればともかく、団信を生命保険代わりにしている方は返済後に契約できる健康状態を保つなど、慎重に判断する必要があります。

まとめ

繰り上げ返済は、将来の家計に余裕を持たせるうえでも有効な手段です。しかし、返済する金額が少なかったりタイミングが遅かったりすると、期待した利息軽減効果を得られない可能性があります。将来を見通すのは難しいことですが、いつ、どれくらいの金額を繰り上げ返済に充てられるかをあらかじめ検討しておくこともポイントでしょう。

ただし、無理をしてまで繰り上げ返済を実行する必要はありません。そのときの家計の状況を見定め、余裕があるときに返済することが大切です。それに、他の住宅ローンへ乗り換えることでも、繰り上げ返済と同じ効果を得られる場合もあります。返済負担が重くなったら、あらゆる手段のなかでもっとも得策な方法を見つけるようにしましょう。

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