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【2022年最新】住宅購入時の贈与税を節約する方法は?特例が適応される条件や注意点を解説
更新日:2022.06.27
マイホームの購入にあたって親から住宅取得費用の援助を受けるケースは珍しくありませんが、贈与税の仕組みを把握しておかなければ、自分たちに最適な方法を選べません。
そこで今回は、住宅購入時の贈与税を節約する方法について解説しますので、マイホーム購入をご検討中の方はぜひとも最後までお付き合い下さい。
そもそも贈与税とは?
贈与税とは、個人間の贈与で多額の財産を取得したときに、その財産に対して課税される税金のことです。金銭だけでなく、不動産、自動車、有価証券なども対象になります。
贈与税には基礎控除額があり、その年の1月1日から12月31日までの合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。
ただし、住宅を取得することが目的の贈与であれば基礎控除額を高く設定された特例が使えます。それが、「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」です。
住宅購入の贈与税の課税方法
住宅購入の贈与税の課税方法は以下の通り分類されますので、制度の概要を把握してその時々で最適な課税方式を考えてみましょう。
・暦年課税
・相続時精算課税
・住宅取得等資金の非課税の特例
・住宅取得資金贈与の特例が改正
順番に解説します。
暦年課税
暦年課税制度とは、1月1日~12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額をもとに課税される方式のことであり、1人当たりの基礎控除が110万円となりますので、その範囲内では贈与税の申告は不要とされています。
相続時精算課税
相続時精算課税制度とは、原則60歳以上の直系尊属(父母または祖父母)から、18歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合に選択できる課税方式のことです。
上限2,500万円の特別控除を受けられることが特徴であり、相続が開始されるまで何度贈与を受けても累計2,500万円までは非課税となりますが、贈与者が死亡した場合は相続税の適用対象として相続財産に加算されることに注意して下さい。
住宅取得等資金の非課税の特例
「住宅取得等資金の贈与税における非課税の特例」とは、親や祖父母などから住宅取得を目的とした贈与を受けても、法律で定められた限度額までは非課税にするという特例です。
上記の通り、一般的な贈与税は基礎控除額が110万円ですが、この特例だと省エネ等住宅(長期優良住宅、低炭素住宅など)は1,500万円、省エネ等住宅以外の住宅は1,000万円までが非課税になります。
また、この特例は通常の贈与税の基礎控除と併用できるため、それぞれに110万円を加算することが可能です。つまり、省エネ等住宅なら最高1,610万円まで、省エネ等住宅以外の住宅なら最高1,110万円までが非課税限度額となります。
なお、時限特例のため「2023年12月31日までに契約締結した場合」に適用されます。ここでいう契約締結とは、不動産会社との売買契約や施工会社と工事請負契約の締結日です。贈与契約の締結日ではないので、注意しましょう。
住宅取得資金贈与の特例が改正
住宅取得資金贈与の特例が改正により、2023年12月31日まで延長されましたが、非課税枠自体が縮小されたことに注意して下さい。
省エネ等住宅については1,500万円から1,000万円へ減額され、それ以外の住宅については1,000万円から500万円へ減額されています。
また、中古住宅については築年数要件が廃止され、1982年1月以降の新耐震基準に適合していれば適用対象となることも覚えておきましょう。
加えて、受贈者の年齢要件についても20歳以上から18歳以上へ引き下げられています。
住宅購入の贈与税の特例が適用される条件と申告方法
住宅購入の贈与税の特例が適用される条件と申告方法を以下の通りまとめていますので、制度の概要を把握して、マイホーム取得費用の負担軽減に努めて下さい。
・受贈者の条件
・住宅の条件
・申告方法
順番に解説します。
受贈者の条件
受贈者の条件について主なものを以下の通りまとめていますので、詳細は国税庁ホームページで確認して下さい。
No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁 (nta.go.jp)
・贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること
・贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること
・贈与を受けた年の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること
・平成21年~令和3年分までの贈与税の申告で住宅取得資金等の非課税の適用を受けたことがないこと
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等とすること
住宅の条件
適用される住宅の条件を以下の通りまとめていますので、新築住宅の建築をご検討中の方は概要を押さえておきましょう。
・新築または取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の1/2以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること
・建築後使用されたことのない住宅用の家屋
・建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以後に建築されたもの(新耐震基準)
申告方法
特例の申告方法は、贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日までの間に、非課税の特例適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書を納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。
添付書類として、戸籍謄本・請負契約書・本人確認書類などの添付が必要となります。
住宅購入の贈与税の特例を使用しない方が節税できるケース
贈与税と似たものに、相続税があります。実際に、この2つの税は関連性が高く、「贈与税は非課税だったけど相続税の方が高くなった」というケースも想定され、場合によっては特例を受けないほうが節税効果は得やすいこともあります。
特に、以下のケースでは将来の相続を見越して比較検討することをおすすめします。
相続税の小規模宅地等の特例
「相続税の小規模宅地等の特例」とは、亡くなった親(被相続人)の自宅を相続する際に、その物件の評価額を330㎡まで8割減にできる特例です。不動産評価額を抑えることで、相続税の大幅な節税が期待できます。
この特例が適用されるのは、「配偶者」「同居の親族」「家を持っていない親族」のいずれかになります。「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」で家を建てた方は、配偶者でない限りこれらの条件を満たしませんから、親の自宅を相続すると多額の相続税が課せられる可能性があります。
相続時精算課税制度
「相続時精算課税制度」とは、相続の一部を前倒せる制度です。生前の贈与額が累計2,500万円までは贈与税が課せられない、特別控除が利用できます。
たとえば、親から4,000万円の支援を受けて省エネ等住宅を建てる場合、特例の非課税限度額は1,500万円ですから、オーバーした2,500万円に対して贈与税が課せられます。これを相続時精算課税で支払うことで、全額分の贈与税を非課税にできるという使い方ができるのです。
ただし、制度名の通り「相続時に精算する」ものですから、相続時に贈与分が課税対象になります。さらに、年間110万円の基礎控除も受けられなくなります。
特例の贈与税額と、相続時精算課税制度の相続税額、どちらが安くなるかはシミュレーションして確認するしかありません。税理士など専門家と相談した上で、判断されることをおすすめします。
住宅購入の贈与税が非課税限度額を超える場合の計算方法
住宅購入の贈与税が非課税限度額を超える場合の計算方法は以下の通りです。
非課税枠の縮小に伴い、より身近な問題となっていますので、概要を把握して余計な出費が発生しないように努めて下さい。
・計算方法
・税額のシミュレーション
順番に解説します。
計算方法
贈与税の計算方法は以下の通りとなります。
基礎控除後の課税価格の算出後、下記の表の税率と控除額をもとに納付税額を算出して下さい。
課税価格=贈与財産の合計額-非課税限度額1,000万円-基礎控除額110万円
納付税額=課税価格×税率-控除額
※省エネ等住宅以外の非課税限度額は500万円
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
税額のシミュレーション
たとえば、省エネ住宅を建てるために親から2,000万円の資金援助を受けた方の贈与税を求めてみましょう。なお、これ以外の贈与は受けていないことを前提とします。
まず、上記表の「控除後の課税価格」を求めます。
2,000万円-(1,500万円+110万円)=390万円
上記表より、390万円の税率は15%、控除額は10万円ですから贈与税額は以下の通りです。
390万円×15%-10万円=48.5万円
なお、2,000万円の援助を特例ではなく一般税率(税率50%、控除額250万円)で求めると、贈与税額は695万円にもなりますから、特例を受けることで600万円以上の節税につながるのです。
住宅購入の贈与税の非課税特例の6つの注意点
住宅購入の贈与税の非課税特例の注意点をまとめていますので、それぞれの内容を把握しておきましょう。
・税額0円でも税務署に申告すること
・完成時期から逆算してスケジュールを考慮する
・住宅ローン決済後の贈与は認められない
・間違いやすい相続時精算課税制度に注意する
・現金受け渡しでも贈与は税務署に見つかる
・住宅ローン控除と併用する際は一部が控除対象外になる
順番に解説します。
税額0円でも税務署に申告すること
特例を受けるには、贈与を受けた翌年3月15日までに対象物件へ入居し、管轄税務署に申告する必要があります。これは、非課税限度額内であっても同じです。
たとえば1,000万円の贈与を受けた場合、特例だと非課税限度額内ですから贈与税額は0円ですが、申告しなければ「何が目的の贈与なのか」がわからず、一般税率の贈与税の支払いを求められることがあります。期限内に必ず申告するようにしましょう。
なお、申告する際には以下の書類が必要です。
■特例の申告に必要な書類
・贈与税申告書
・戸籍謄本
・登記事項証明書
・工事請負契約書または売買契約書の写し
・源泉徴収票(所得税の確定申告書を提出した場合は不要)
完成時期から逆算してスケジュールを考慮する
贈与を受けた翌年3月15日までに住宅の引き渡しを受けて入居することも、特例を受ける条件の一つです。この日までに家が完成せず引き渡しが済んでいないと、特例が受けられないことがあります。
「工事が完了に準ずる状態にある」と税務署が認めた場合は、特例が受けられますが、あらかじめ余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。
住宅ローン決済後の贈与は認められない
住宅ローンを利用される方は、決済前に贈与を受ける必要があります。決済後に受けると、住宅ローンの返済などほかの目的で贈与を受けたとみなされ、特例が適用されないことがあります。
間違いやすい相続時精算課税制度に注意する
相続時精算課税制度の概要は先に述べた通りですが、住宅購入の贈与税の非課税特例と間違えないように注意が必要です。
尚、住宅資金非課税制度と相続時精算課税制度は併用可能ですので、贈与財産の金額や資産状況を加味した上で、自分たちに合った制度の利用を心がけて下さい。
現金受け渡しでも贈与は税務署に見つかる
手渡しの現金受け渡しでも贈与は税務署に見つかりますので、贈与の申告は不可欠です。
税務署には調査権限があり、銀行口座の入出金記録や使用用途の調査から逃れることはできませんので、誠実な対応が求められます。
住宅ローン控除と併用する際は一部が控除対象外になる
住宅ローン控除と併用する際は一部が控除対象外になることにも注意が必要です。
具体的には、住宅借入金等の年末残高の合計額が住宅用家屋の取得費用の額から、非課税制度の適用を受けた部分の金額を差し引いた額を超える時は、その超える部分に相当する金額については住宅ローン控除の対象外となります。
住宅購入時の贈与税に関するよくある質問
住宅購入時の贈与税に関するよくある質問をまとめていますので、他の方の疑問点を自分たちのケースに置き換えて考えてみましょう。
・非課税限度額以上に贈与を受けるにはどうするべき?
・住宅取得資金贈与は諸費用にも利用できる?
・住宅取得資金贈与を頭金にしない場合はどうなる?
順番に解説します。
非課税限度額以上に贈与を受けるにはどうするべき?
住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例でも、相続時精算課税制度でも、非課税限度額以上の贈与に関しては、贈与税が課せられます。それでも、贈与税の支払いから免れる方法が、いくつかあります。
たとえば、家を建てる数年前から「非課税限度額の贈与を受け続ける」こと。年間110万円までは贈与税がかかりませんから、5年続ければ550万円の資金援助が非課税で得られます。地道な手段ですが、贈与税の支払いを確実に免除できる方法でもあります。
「購入する住宅を共有名義にする」というのも一手です。土地や建物の名義(持ち分)を親と共有にすれば、贈与ではないので贈与税は課せられません。もちろん、生活をともにする必要もありません。
ただし、親が亡くなったときの相続について考えておく必要があります。相続人が自分だけであれば、親の持ち分の相続税を支払うだけで済みますが、ほかに相続人がいる場合、親の持ち分をほかの相続人も相続してトラブルが生じるおそれがあります。とはいえ、遺言を残しておくなど相続時の対策をしておけば贈与税は抑えられます(それでも相続税は生じます)
住宅取得資金贈与は諸費用にも利用できる?
住宅取得資金贈与は諸費用には利用できません。
諸費用は非課税制度の対象外となりますので、暦年課税の基礎控除110万円までの贈与分を利用して下さい。
住宅取得資金贈与を頭金にしない場合はどうなる?
住宅取得資金贈与を頭金にしない場合は非課税制度の適用を受けることはできませんので、基礎控除110万円を超える部分については贈与税の課税対象となります。
まとめ:住宅購入の贈与税は非課税特例を上手く利用しよう
令和3年4月以降の非課税限度額は、省エネ等住宅が1,200万円、それ以外の住宅は700万円に引き下げられる予定でした。しかし、令和3年度の税制改正により、省エネ等住宅は1,500万円、それ以外の住宅は1,000万円までに据え置かれました。上手に活用すれば、大きな節税効果も期待できますので、検討してみてはいかがでしょうか。
なお、この特例は2023年12月31日までとなっていますので、利用を検討されている方は早目に動き出すことをおすすめいたします。
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