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借地権って何?借地権の概要、メリット・デメリットまとめ
更新日:2021.06.30
土地や家を探していると、不動産広告に「借地権」「借地権付き建物」と記載されている物件情報を見かけることがあります。所有権のある一般的な物件と比べると価格が安く、興味を示された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ところで、所有権と借地権とでは、具体的に何が違うのでしょうか。そもそもどのような権利なのかを含め、借地権について解説します。
目次
借地権とは?
借地権とは、建物を建てるために土地を借りる権利のことをいいます。借地権は、土地の所有者である地主と、借地人(家を建てたい人)が賃貸借契約を締結することで、権利が発生します。
借地人は、土地代の代わりに権利金または保証金を地主に支払って土地を借り、さらに土地にかかる毎月の地代(土地の賃料)を支払うことで、その土地に住み続けることが可能です。ただし、権利には期限があります。また、権利金や保証金は不要なケースもあります。
「賃貸で借りる家」と混同されがちですが、借地に建てた家の所有権は借地人にあります。すでに建物が建っている「借地権付き建物」についても、建物の所有者は借地人です。つまり、「土地は賃貸だけど建物は住む人の所有物になる」という点で、賃貸の家とは異なります。
土地購入と借地の違い
借地権を使えば、土地を所有しなくても家を建てて住むことが可能です。借地の上に建てた家だからといって、地代を払い続けること以外に普段の生活で特別な違いはなく、土地を購入して建てた家と同じように暮らせます。
ただし、土地の所有権は地主にあるため、建物の増改築や売却などをする際には地主の承諾を得る必要があるなど、一定の制限が加わります。
これに対して、所有権のある土地を購入して家を建てる場合は、増改築や売却などについて誰の許可を受けることなく自由にできます。
借地権の種類
借地権には、以前の借地法(旧法)を適用した「旧借地権」と、現行の借地借家法を適用した借地権があります。現行法では、「普通借地権」「定期借地権」など、さらに細かくわかれ、権利の期限や内容などがそれぞれ定められています。
ここでは、旧借地権の内容と普通借地権、定期借地権の内容について説明しましょう。
旧借地権
1992年に現行法の「借地借家法」が施行されました。それ以前は「借地法」「借家法」にわかれており、これらの旧法にもとづいて成立した借地権を「旧借地権(旧法上の借地権)」と表します。
旧借地権の存続期間(契約期間)は、建物の構造によって異なります。たとえば、木造などの建物の存続期間は30年(最低20年)、鉄骨造や鉄筋コンクリートの場合は60年(最低30年)です。
期限後に更新することも可能で、その期間は木造などの建物だと20年、鉄骨造や鉄筋コンクリートだと30年になります。更新を続けることで、借地人は半永久に土地を借り続けることも可能です。
一方、地主にとっては原則として更新の申出を拒むことができず、借地権が発生すると土地を取り戻すのが困難という一面がありました。こうした背景から新しい借地借家法では、更新ができない定期借地権が設定されるなど、地主側にも有利になる改正がされています。
普通借地権
現行法に基づいて生じる借地権の一つです。普通借地権は旧借地権と同じく、存続期限が決まっています。ただ、建物の構造に関係なく一律で30年です。
また、更新することで半永久に借りられる点も旧借地権と同じですが、合意の上の更新であれば、1回目は20年、以降は10年で存続期間を延ばせます。
なお、旧借地権では建物の老朽化などで朽廃しても借地権は残りますが、現行法の普通借地権には朽廃による消滅の規定がなく滅失になります。その際、地主の承諾を得ずに再建築すると借地権を失う可能性があるので注意点しましょう。
定期借地権
現行法で新たに設定された借地権です。現在、戸建住宅やマンションなどを建てる土地に設定される借地権の多くが、定期借地権になっています。
普通借地権とは異なり、更新がないのが定期借地権の特徴。契約終了後は、更地にして地主に返還する必要があります。
その代わり、存続期間が長く設定されています。契約内容によって異なりますが、一般定期借地権の場合、存続期間は50年以上です。永住する予定がなければ、問題ない長さでしょう。
借地権のメリット
土地代を抑えられる
借地権の土地は、所有権のある土地を購入するより安いことが特徴の一つです。毎月の賃料がかかるとはいえ、家の購入にかかる全体的なコストをかなり抑えられます。地域にもよりますが、借地権付き建物の場合だと6~8割程度の購入費用で済むことが多いようです。
更地であれば、建物にかける予算を増やせますから、理想に近い家を実現しやすくなるでしょう。
土地の固定資産税・都市計画税はかからない
土地の所有者は地主ですから、土地にかかる固定資産税や都市計画税などの税金は地主が支払います。なお、建物の所有者は借地人のため、建物に対する固定資産税や建物の取得時にかかる不動産取得税などは、借地人に支払い義務があります。
永久に借りられることもある
旧借地権および現行法の普通借地権の土地の場合は更新ができますから、期限を延長して借りることが可能です。更新を続ければ、半永久に土地を借り続けられます。
立地条件の良い土地が多い
借地権のある土地は、駅近や幹線道路沿いなど利便性が高く立地条件の良い土地であることが多いようです。地主にとっても、立地条件が良ければ賃料を高く設定しやすいといったメリットもあります。このため、好条件の土地に家を建てられる可能性もあります。
借地権のデメリット
地代(土地の賃料)がかかる
マイホームを手に入れても、借地人は地主に対して地代を毎月支払う必要があります。建物をローンで購入した場合は、地代と合わせてダブルで支払いが生じることが注意点の一つです。
また、契約期間が終わり更新する際には更新料が必要な場合がありますし、更新のできない定期借地権だと更地で戻すことが前提のため建物を取り壊す解体費などもかかります。
融資が受けにくいこともある
借地人の所有物は建物だけです。その建物の建築費用について住宅ローンを利用する場合、所有権のある土地と比べて担保評価が低いため、銀行などからの融資を受けにくい傾向があります。
最近では、借地権専用の住宅ローンも登場していますが、取り扱っている金融機関が限られる点で注意が必要です。
増改築するときは地主の承諾が必要
建物を増改築する際、その内容によっては地主の承諾と承諾料が必要になることがあります。一般的には、建築面積や間取りの変わらないリフォームやリノベーションなら承諾は不要なケースが多いものの、契約内容にもよるためどこまで改築可能かをあらかじめ確認しておくことが大切です。
売却が難しいこともある
借地人は、建物を売却することも可能です。ただし、売却する際にも地主の承諾が必要になります。譲渡承諾料が必要なケースもあり、売却後の手取り額が少なくなる可能性もあります。
借地権について知らないとトラブルに
借地権の土地には、所有権の土地にはない「トラブルの種」が潜んでいます。とりわけ、地代、更新、相続、売買などお金に関する内容が多くみられるようです。具体的にどのようなトラブルが生じるか、いくつか例を紹介しましょう。
地代が上がることもある
借地権の存続期間は30年以上と長期にわたるため、地代がアップする可能性はあります。主に、固定資産税の増税や地価が上昇したときなどが、地代の上がるタイミング。契約書に「地代は増減しない」などの特約がなければ、借地人はそれに応じる必要があります。
このとき、値上げ幅が大きいなどの理由で「不当な値上げだ」といったトラブルになるケースもみられます。話し合いをして、双方の合意点を探ることが大切でしょう。
地代に関しては、滞納に関するトラブルもあります。支払いが3ヵ月滞ると借地権の契約解除を求められる場合がありますから注意しましょう。
更新料の支払いを求められた
旧借地権や普通借地権で更新をする際、地主に更新料を支払うことがあります。しかし、法律では借地権の更新料に関する条項がないため、借地人が支払いを拒否するといったトラブルも散見されます。なかには「払わないと更新させない」と、地主が宣言するケースもあるようです。
結論からいうと、契約書に更新料に関する条項がなければ、更新料の支払い義務はありません。また、支払わないからといって更新を拒否する権利も地主にはありません。
ただし、契約書に記載がなくとも更新料の支払いを借地人が合意していたり、過去に支払った実績があったりした場合は、支払い義務が生じます。
相続時に名義変更料を請求された
借地人が亡くなると、被相続人は建物の所有権を相続することになります。その際、地主から名義変更料を求められることがあるようです。
名義変更料は本来、建物を売却して第三者へ譲渡する際にかかるものです。しかし、相続は譲渡にあたらないとして、地主と借地人の被相続人との間でトラブルが生じることもあります。
この場合は被相続人の主張が正しく、相続は譲渡ではないため、名義変更料を求められても支払い義務はありません。また、地主の承諾も必要ないため、承諾料の支払い義務もありません。地主側の理解不足が原因で起きやすいトラブルの一つです。
まとめ
借地権を使うことで、家の購入費を大幅に抑えられるのが、魅力の一つです。ただし、契約期間中は毎月賃料を支払うことになりますから、所有権のある土地と迷ったら、トータル費用をシミュレーションして比べることで選択しやすくなるでしょう。
また、借地権には制約が多く、地主とのトラブルが生じやすいといわれます。あらかじめ、どのようなトラブルが生じやすいかを把握しておき、その対処法も確認することで、トラブルを未然に防ぐことも可能です。