COLUMN コラム
更新日:2020.10.22
住宅ローンを利用してマイホームの購入を検討されている方であれば、「いくらまで借りられるのか?」と気になることがあるでしょう。金融機関では、住宅ローン希望者一人ひとりを審査して、「この額までなら融資できる」という借入可能額を決めています。
今回は、借入可能額を算出するためのポイントをお伝えします。
目次
住宅ローンの借入可能額についてインターネットで調べると、「目安は年収の〇倍まで」といった情報を見かけた方も多いのではないでしょうか。
「年収の5倍が目安」とうたっているサイトが多いようですが、なかには「7倍」「10倍」などの数字も見られます。仮に年収が400万円の人の場合、5倍なら2,000万円、7倍なら2,800万円、10倍なら4,000万円ということになります。2,000万円と4,000万円では、まったく違う家が建つでしょう。
こうした情報はあくまでも「目安」であり、家計の事情など契約者によって異なりますし、そもそも現在の年収が10年後、20年後も同じという人も少ないでしょう。
また、金利が1%異なればトータルの返済額は数百万円も変わってきます。金利は金融機関によっても異なりますし、金利がちょっと上がるだけでトータル返済額の差は年収よりも多くなることだってあるのです。
「年収の〇倍」という説は、あまり気にしない方が良いでしょう。
では、借入可能額はどのようにして求めるのでしょうか。それは、金融機関によって異なるため、一概にはいえません。
ただ、多くの金融機関では「返済負担率」「金利(審査金利)」「借入期間」「ほかのローンの借入状況」などの要素から住宅ローンの借入可能額を試算しています。
返済負担率とは、収入(年収)に対するローン返済額の割合のことです。毎年100万円をローン返済に充てている年収400万円の人の場合、返済負担率は以下のように求めます。
・100万円÷400万円=25%(返済負担率)
多くの金融機関では、返済負担率が25%以内となるようにして借入可能額を算出しているといわれます。
住宅ローンの返済額には、金融機関の金利が含まれています。金利は、全期間固定タイプであれば契約時の金利がそのまま適用されますが、変動金利タイプだと将来の金利を予測しなければ借入可能額を求められません。
そこで金融機関では、将来の金利を独自に予測した「審査金利」というものを用いて、借入可能額を算出しています。審査金利は、実際に適用される金利(適用金利)よりも高く設定されているのが一般的です。公表されていませんが、2~4%くらいに設定している金融機関が多いようです。
自動車ローンやカードローンなど、住宅ローン以外に支払っている融資についても、金融機関ではチェックしています。
ほかのローンの利用額が多いと、住宅ローンの返済が滞る可能性もあるため、借入可能額が少なくなる場合があります。借入可能額を少しでも多くしたい方は、ほかの融資をできるだけ返済することをおすすめします。
上記で紹介した要素をもとに、金融機関では一人ひとりの状況に合わせて借入可能額を決めています。
ここでは、年収別に借入可能額の目安をシミュレーションしました。なお、上記で紹介した要素の前提条件は、以下の通りです。
・返済負担率:25%
・借入期間:35年
・審査金利:3%
・他のローンの借入状況:なし(0円)
この条件で、年収を100万円ごとにランク分けして「借入可能額」と「月々の返済予定額」を算出してみましょう。
年収 | 借入可能額 | 月々の返済予定額 |
---|---|---|
300万円 | 1,624万円 | 6万2,499円 |
400万円 | 2,165万円 | 8万3,320円 |
500万円 | 2,707万円 | 10万4,178円 |
600万円 | 3,248万円 | 12万4,999円 |
700万円 | 3,789万円 | 14万5,819円 |
800万円 | 4,331万円 | 16万万6,678円 |
900万円 | 4,872万円 | 187,499円 |
1,000万円 | 5,413万円 | 20万8,319円 |
これを見ると、借入可能額は年収の5倍よりやや多いという結果になります。
ただし、前提条件が変われば借入可能額がまったく異なります。
たとえば、年収400万円の人が上記の前提条件のうち借入期間のみを変えたとします。借入期間が35年だと借入可能額の目安は2,165万円でしたが、これが30年になると1,976万円、25年だと1,757万円にまで減ります。
また、年収400万円の人が上記の前提条件のうち審査金利のみを変えた場合、審査金利が1%下がると2,515万円、1%上がると1,882万円が借入可能額の目安になります。金利が1%違うことで、借入可能額は300万円前後も違ってくるのです。
このほか、カードローンなど他のローンの支払いが月々数万円程度ある場合でも、借入可能額が数十万円から数百万円も変わってきます。前提条件が変わることで、借入可能額が大きく異なるのを把握しておきましょう。
ここまでは、年収別で借入可能額の目安について紹介してきました。上の表から、予想よりも多くのローンを借りられることを知り、ワンランク上の家を考えた方がいらっしゃるかもしれません。その場合、注意しなければいけないのは、「今の年収で借りられる額と、ゆとりをもって返済できる額とは異なる」という点です。
仮に、限度額ギリギリまで借り入れることで、ワンランク上の物件を購入できるかもしれませんが、それにともない月々の返済額も高くなります。いまの生活が続けば問題なくても、子どもの教育費がかかる時期もあれば、転職などで収入が減ることもあるでしょう。家計状況によっては、住宅ローンの毎月の返済が滞るリスクも高くなるのです。
上記表では月々の返済予定額も示しましたが、これをもとに「無理なく返済できる額」を借り入れることが大切でしょう。
限度額ギリギリまで借り入れるリスクについて、もう一つ注意しなければならないポイントとして、諸費用と固定資産税があります。
諸費用には、登記費用や火災保険料のほか、住宅ローンの融資手数料や保証料なども含まれます。借入額を増やすと住まいの価値も高くなりますから、諸費用も高くなる傾向があります。
また、住み始めてから生じる固定資産税も高くなり、これらの支払いに手が回らなくなる場合もあるでしょう。
増えるのは住宅ローン返済額だけではないことも、理解しておきましょう。
繰り返しになりますが、住宅ローンの借入希望額は、「無理なく返済できる額」を前提に検討することが大切です。とりわけ、安定した収入が見込める給与所得者の場合、返済計画を立てやすいため借入希望額も算出しやすいでしょう。
一方で、自営業やフリーランスなど収入が不安定な方の場合、考え方によっては限度額まで借りるのも一手です。頑張った分だけ収入を増やせる働き方ですから、住宅ローンを仕事のモチベーションにつなげることもできるでしょう。とはいえ、病気などで働けなくなると収入が激減しますから、ゆとりをもって借入希望額を決めることも重要なポイントです。
住宅ローンの利用を検討する際には、返済期間中にどのようなライフイベントがあり、どれくらいの費用がかかるかといったプランをしっかり決めることが先決です。そのうえで、たとえば子どもの教育費がかかる時期でも無理なく返済できる額を求め、それをもとに借入希望額を決めるというのも一つの方法でしょう。
将来に必要な額は、家族によっても異なります。いくら必要か迷われたときには、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家に相談することで、答えが求めやすくなります。
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